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[プレス発表] KUMADAI耐熱マグネシウム合金の不燃化に成功~航空機部品などへの実用化に弾み!~

熊本大学 プレスリリース 2019年12月17日

 
熊本大学先進マグネシウム国際研究センター(センター長:河村能人)の河村能人教授と井上晋一特任助教らは、KUMADAI耐熱マグネシウム合金の不燃化に成功しました。

 マグネシウムは、実用金属で最も軽く、航空機や自動車などの輸送機器の省エネや地球温暖化ガス排出抑制のための次世代構造材料として注目されており、世界中で研究開発が活発に行われています。

 熊本大学の先進マグネシウム国際研究センターでは、これまで「KUMADAI耐熱マグネシウム合金」と「KUMADAI不燃マグネシウム合金」の2種類の革新的なマグネシウム合金を開発して、基礎と応用の両面で研究開発を進めてきました。両合金は、アメリカの連邦航空局(FAA)のマグネシウム燃焼試験をパスしたことから、航空機用構造材料として注目され、NEDOプロジェクト等として研究開発が進められています。

 「KUMADAI耐熱マグネシウム合金」は「KUMADAI不燃マグネシウム合金」に比べて高温下で高い強度があります(図1)が、その発火温度は約880℃であり、FAAの燃焼試験で使用されるオイルバーナーの火炎温度である965℃よりも低く、不燃性とは言えませんでした(図2)。安全性の面からは、965℃を超える発火温度、すなわちFAAの燃焼試験において絶対に燃えることが無いという、不燃性が求められていました。

 今回、KUMADAI耐熱マグネシウム(Mg97Zn1Y2 原子%)に微量の元素を添加することによって、1,000℃を超える発火温度を達成し、KUMADAI耐熱マグネシウムの不燃化に初めて成功しました。今回発見した元素はYb(イッテルビウム)とCa(カルシウム)ならびにBe(ベリリウム)の3種類であり、それらの添加量がYbで0.1原子%以上、Caで1.0原子%以上、Beで0.007原子%(重量で25ppm=1万分の25重量%)以上の場合に、1,000℃を超える発火温度が得られ、不燃性が達成できました(図3)。

 発火温度向上元素としては、一般的にCaが知られていましたが、今回、新たにYbとBeを見出したことになります。なお、Beは有害元素として知られていますが、自然界の鉱石にも2.8~5.5ppm程度含まれており、工業用マグネシウム合金においても100ppm以下の添加が許容されています。今回、その許容量の4分の1程度の極微量添加で不燃性が発現したので、実用的には問題がないと言えます。

 今回の不燃化によって、KUMADAI耐熱マグネシウム合金の製造時と利用時の安全性が高まったことから、航空機や自動車など様々な輸送機器への応用に弾みが付くと考えられます。今後は、現在進めている多くの企業との共同研究を加速させて、KUMADAI耐熱マグネシウム合金の社会実装化を図っていきたいと考えています。

 なお、今回の成果の一部は、平成31年4月1日に、この分野で権威のある国際的な学術雑誌「Corrosion Science」(インパクトファクター6.355)に論文が掲載されました。また、12月10~14日に横浜で開催された材料研究国際会議(MRM2019)において、河村教授が基調講演(Keynote)として成果の一部を発表しました。さらに、12月20日に東京で開催される、一般社団法人日本マグネシウム協会主催の技術講習会において講演が予定されています。

(論文情報)
論文名:Oxidation behavior and incombustibility of molten Mg-Zn-Y alloys with Ca and Be addition
著者:Shin-ichi Inoue, Michiaki Yamasaki, Yoshihito Kawamura
掲載誌:Corrosion Science
DOI:10.1016/j.corsci.2018.12.037
URL:https://doi.org/10.1016/j.corsci.2018.12.037

(講演情報)
令和元年度第4回技術講演会 「不燃・難燃マグネシウム合金の特性と開発・応用の現状」
日時:令和元年12月20日(金)10:00~16:45
場所:京橋区民館1号室(東京都中央区京橋2-6-7)
申込等詳細:http://magnesium.or.jp/events/2019-12-20/